「平成23年版高齢社会白書」によると、昭和45年(1970年)には、7.1%であった高齢化率(65歳以上の高齢者の比率)は、平成17年(2005年)には20.1%に達しており、現在は23%を超え、5人に1人が高齢者、9人に1人が75歳以上人口という、本格的な高齢社会となっています。そして、平成25年(2013年)には高齢化率が25.2%で4人に1人となり、平成47年(2035年)に33.7%で3人に1人になると推計されています。
高齢者は、身体的な機能が全般的に低下しているため、明らかに特定の障害がある場合以外は、外見上にはっきりとわかる特徴が見られないこともあります。しかし、程度は軽くても様々な障害が重複している可能性があり、移動する時に身体的・心理的負担を感じていることが多いと考えられます。
機能の低下の内容や、その程度は様々であり、本人が気づいていないうちに進行していることもあります。身体的な機能の低下はそれぞれの障害と関連して対応を考えることができます。例えば、耳が遠くなるということは聴覚の障害の一部だと考えることができますし、白内障 ※ で視力が低下することは、視覚の障害の一部ということができます。
心理面では、体力全体が低下している高齢者は、素早く動くことや、長距離歩くこと等に自信がなくなり(また、実際に困難になり)、心理的にも気力が低下してくることがあります。
※白内障
目の中の水晶体を構成しているタンパク質の性質が変わってしまうことにより、黄白色や白色に濁る。原因としては、加齢、外傷の他、何らかの病気が同時に起こることにより生じるものも多い。
強いまぶしさ(羞明)が生じる。コントラストの低いものを見分けることが難しくなる。特に逆光では視力が著しく低下する。
移動上の困難さ
- 人混み、大規模な駅、普段利用しない場所では不安を感じやすい。
- 若い人のように長い距離を歩いたり、素早く行動することが困難な傾向にある。
- 転倒したり、つまずきやすくなり、大きなけがにつながる可能性がある。
- 路線図、運賃表、時刻表などの小さな文字が見えにくい。
- 新しい券売機等の操作がわかりにくい。
- 階段の上り下り、車両の乗り降りなどは、体への負担が大きい。
- 階段の利用については、上るとき以上に下るときの体への負担が大きく、不安に感じる。
- トイレにしょっちゅう行きたくなる。
- 長時間の立位が困難であり、ベンチなどに座る必要がある。
- 屋外や空調がきいている所などでは、水分の摂取を適当に行えない等から体温の調整が難しい。
- 等
認知症
認知症は加齢に伴い著しく出現率が高まる病気です。
認知症の基本的な症状は単なる「もの忘れ」ではなく、脳の萎縮や血管の病気による変化によって起こる認知・記憶機能の障害です。
認知症にはいくつかの原因があり、アルツハイマー病や脳血管性認知症が代表的です。
移動上の困難さ
- 体験の全部や少し前のことを忘れたり、忘れたことの自覚を伴わない記憶機能の障害がある。
- 自分のいる場所や行き先、時間がわからなくなる障害がある。
- 徘徊行動をとり駅などに迷い込む場合がある。こうした行動は止めることが困難な場合が多い。
- 等